にんげん

東横線の計画的に立てられた落下防止ドアの前の薄黄色い点字ブロックの上のにんげんの足がざすっと入りそうな隙間の前に、黒い携帯が落ちていた。駅の床は薄灰色で、一回だけ吐瀉物が酔っ払いの千鳥足と下向かぬ乗客の足に伸ばされて薄オレンジになっているのを見たことがある。携帯はスマホのことだけど、携帯という言葉にはスマホほどの技術が全く含まれていないけれど誰もがそうしている代表的な行為携帯を引いているからまだ生きてるか。

 

このごろの温度の外気にあたる、歩くだけで風がなくても温度に包まれる感じは、自分の体温の方が外よりもあたたかくなって、夏からもずっとそうだけど、この地にからだが浮き立っていることを体温から感じられるから快なのだろうか。おそらく、この温度差がちょうどいいのではないか、寒すぎると、寒COLDを身体から押し出すことしか考えられなくなる。

 

昼に雨は降らなくて、まだ見えていないところから金木犀のにおいがした。