世界一可愛い黒い傘は見つからず、大量のシュークリームはつぎつぎ

 

世界一可愛い傘は、あんな可愛いんだから誰かが戻しに来てくれると思っていたが、幻想をしばらくして恵比寿駅、6つの目突き出した交番にくろいかさ…持ち手は緑の花、大事なのは開いた時の内側の鮮やかな花柄。「見た目は黒い傘なんですよね、それだと、もう数えられないくらいあって…

集まってくるのに集まりすぎて見つからない。見つけられないから取りに行くこともできず、みなみな東京都の物になる。捨てられるのではなく。どこかへ流れた可愛い傘はもう手元にこない、ということと比べるのではなく、誰かが誰かを想定する材料もなく手にするかもしれないときの偶然のムダさみたいなのにくやしくて、未だに雨が降るたび傘をささなくてはならずあの傘を思い出し、待ち合わせの直前で帰りたくなるときみたいな胸のくるしさがまだある。

 

ものをなくさないことを特徴のひとつに置いていたのに、2018年は沢山けっこう失くしたくなかったものをなくした。関係はなさそうであるだろうが、沢山の物を所有した。酔っ払ってピアスを投げ捨てるほうがまだマシで、失くしたくないものを持っていることを忘れてどこかへ行ってしまう、ほかのことに気を取られていたことが情けなく、物に執着していることも、大切だと思っていることが結果軽々しかったことになるのも、胸ひきつる。

 

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部屋は導線がないと埃髪はコロコロしないと物の積み方がそれなりでないといらいらするのとは別で、引っ越しの荷物がぜんぜんまとまらなくて寝る時間がなくて、ものが広がり終わらなくて家具がなくなってすべてのものが床に接着、私も座り込んで目線見下ろすかたち、ものたち、ミニチュアほどでもなく部屋にあり私のサイズは何も変わらず、ただ高さを抜いて角が出た部屋は変わらないのに上部は薄暗い白色にがらんとして、出てきた壁の面やら窓の枠はたるみまくって、はまっていたことがやっと分かる。

馴染むのがこわかったことを忘れていったのは、馴染んでしまったことによるものだった。まったく、気を抜くと肩に力が入る、わからなくなった時の対処法なんてもう既にいくらでもこなしてきたはずじゃん!もっとむずかしいことは全音を聞くことや風に飛ぶことや水を飲むこと!空になった部屋に寝転んで安心した。肩が軽くなって即すべて捨てるべきだと寝転がったからだ全身が言った。雑さが足りないこと、大量の荷物とともに新居に来た。くやしい、ゆるせない、そんな捨てられるものにこびりつかれて邪険することなし。あたたかさ、きてる、このよろこびはとっくに知っていたことよ!ふくらんできた風の厚みに甘やかされず切り刻めブルー!

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